佐藤洋二郎著

石見文学散歩目次
女 優
花 神/浜田騒動
閉じられた海図/
間宮林蔵
女 優 X
終 焉
イルティッシュ号の来た日
七人の吉右衛門/
四十七人の刺客
漁 灯/神威岬
ヰタ・セクスアリス/
私の森鴎外を求めて
津和野/脱 出
ふるさとの書林
石見文学散歩

佐藤洋二郎 さとう ようじろう
 1998年7月集英社刊「岬の蛍」の中に2編とも収録。1949年、福岡県生まれ。中央大学卒。1995年 「夏至祭」で第17回野間文藝 新人賞を受賞。「河口へ」「前へ、進め」「夢の扉」「遠い夕焼け」「大落選」「父の恋人」「神名火」など。 著者は九州で生まれたが、父の死により母の 故郷である大田市で思春期を過ごした。

エッセイ『われら50歳の「こども」たち』を『随筆集』に収録しています)

漁 灯(いさりび)石見一ノ宮・物部神社
 主人公・秀司は石見の漁師町でうまれ、都会の証券会社に勤めていたが、三瓶山の麓の沼(浮布池?)のあたりの廃屋を手に入れUターンし、追い かけてきた恋人と自然の中で生活する。 ある 日、娘を手放したくなかった美奈江の父が、 二人の暮らし振りを見に来る。・・・・・・

 「祭神が天香具山命と兄弟で、物部の兵を率いて 尾張、美濃、越の国を平定した後、天香具山命は 新潟の弥彦に、宇魔志麻遅命がこの地にきたの だと秀司が言うと、弥彦神社に行ったことがある という森内は降りてみると言った。出雲属を越の 国と石見の国から封じ込めるために陣を張った ところではないかと秀司が言うと森内は興味を 持った。」(本文より) 
(写真:石見一ノ宮・物部神社)

ひめのがいけ北の原・姫逃池(ひめのがいけ)
6月にここに咲く「紫のカキツバタ」は悲恋の伝説 の娘の、「白いカキツバタ」は若者の化身と言わ れています。

神威岬(かむいみさき)
 文中の「波間の向こうに島根半島が見える」、 「そこは歩くと、砂が鳴る泣き浜といわれる場所 だった」という表現から、石見の海辺の漁村が舞 台である。やはりUターンした男と幼馴染の女の 物語が展開されている。

石見の漁村の風景を描く漁村の風景
 「韓島」を舞台に神迎えの行事が展開されるが、 現在の五十猛町の西にある大浦鼻の岬や韓島 あたりかと思われる。著者のご母堂は現在も大 田市にお住まいのようで、たまに帰省されるよ うだ。

男性的な日本海と海の男を描く
 「今日の海は深く蒼い。その蒼さは空の色を映して いた。海と空がいつも一体だということに気づく。 のぼりが風にはためき、海鳥が漁船の上を群がっ ている。初秋の陽射しは柔らかく真吾の背中を照 らしている。波が舟底を叩き鈍い音を上げた。」
 全編にわたって、美しく荒々しい日本海の描写と、 そこに生きる海の男たちや、彼らが生活する漁村 の人間群像が生き生きと描かれている。